CASE STUDY

ケーススタディ

インサイツ自主調査レポート
中国でグループインタビューは可能か-FGIの心得
  「フォーカス・グループ・インタビュー」という調査方法を聞いたことはあるでしょうか。英語ではFocus Group Interviewですので、略して「FGI」と言う方もいますし、後ろの単語だけをひいて「G.I(グルイン)」などと略称することもあります。中国語では「座談会(Zuo4 tan2 hui4)」と言うのですが、むしろこちらのほうが場の雰囲気をうまくとらえているように思います。

  ここでいうFGIとは、特定の属性を持つ6名程度の被験者をひとつのグループとし、司会(モデレーターといいます)が進行を進め、グループ形式で2時間程度のインタビューを行う調査です。1対1のインタビューでも良いのですが、類似する傾向(調査では「属性」などといいます)をもつ人々を集め、特定の消費者層のニーズや価値観について、 「生の声」を聴取することを主眼に置いています。

  なお、他の調査手法と比べて歴史がたいへん古く、長く研究されてきた調査手法でもあります。インサイツでも毎年多くのご依頼を受けており、消費者の直接的な声を聴取する定性調査のなかでも、代表的な手法となっています。ところが、中国におけるFGIの実施においては、様々な不安や、むしろ中国でFGIは不向きなのではないか、という声すら聞かれます。一言でいえば、本音を聞き出すことは難しいのではないか、という話です。

  どうも中国における「面子(メンツ)」の作用が、本音を引き出すことを難しくしているのでは、との考えがあるようです。少し例を出して考えてみましょう。例えば、最近気になる「日中の領土問題」をテーマに中国人の意識調査を行いたい場合はどうでしょうか。二点ほど、指摘したいと思います。

  弊社のように、中国で調査事業を営む場合、中国政府・国家統計局が発行する調査業務資格ライセンスが必要です。このうち、世論調査を実施してはいけないという約束事が存在します。したがい、上述したような「日中の領土問題」など、過度に政治的な問題は世論調査とみなされるケースがあり、実施が難しくなります。仮に「日中の領土問題」をテーマに扱う場合、司会は難しい舵取りが必要になりますし、各種の面子が「発動」することになるでしょうが、そもそもこうしたテーマを扱いにくい法的な背景があるのです。

  FGIに何を求めるかが問題になると思います。顧客はせっかく費用を負担して調査を実施するので、何としても成果を上げなくてはなりませんし、消費者からの「生の声」を聞きたいと願っています。しかし、面子が発揮されるような議論はそもそもFGIにはなじまないと考えています。議論になれば、いかにも「本音感」はあるかもしれませんが、基本的には近い属性の人を集め、そのグループに属する人たちの意見を、参加者同士のコミュニケーションを通して理解していくことが主眼にあります。

  このように、FGIでは被験者の価値観が損なわれてしまうような状況、つまり面子にかかわるような状況は可能な限り回避したほうが良いでしょう。とはいえ、それでもFGIをより効果的な場にするための工夫は当然必要になってきます。特に、中国で実施することを踏まえつつ、結果としては長くFGIで研究されてきたテーマを突き詰めることが重要になると思います。いくつかポイントを取り上げておきます。

  ・良い被験者を集めるため、顧客のニーズを踏まえた事前スクリーニングが適切に行われるかどうか。
  ・司会が正しく顧客のニーズを理解しており、参加者のコミュニケーションを適切に運営できるか。
  ・質問票は顧客のニーズを適切に反映しつつ、設定時間に対してゆとりのある設計におなっているか。

  まずは上述の三点はしっかり押さえたいところです。このほか、中国での実施ですから、対応する業界に熟知した同時通訳を確保できるかどうかという問題もありますし、我々日本人では見逃してしまうような、中国人独特のコミュニケーションスタイルにも注目しなくてはならないでしょう。

  このように、一口にFGIといっても、相当に奥が深く、研究する余地が非常に大きい調査手法だといえます。古い歴史を持ちながらも、いまなお多くご依頼頂いているのはそうしたことの証左といえるかもしれません。